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桑原 ナミ 食のイベントや企画を進化させ、 「伝える」力を次世代へつなぐ


桑原 ナミ (くわはら なみ)
N.GROWTH株式会社
 

ライフチャート
●プロフィール
1974年北九州市生まれ。高校卒業後、東京の短大に進学し、アナウンサーを目指して東京アナウンスアカデミーで学ぶ。局アナにはなれなかったが、福岡ではイベント会社に登録。マイクを持って、お客さんを惹き付ける仕事をコツコツと続け、コミュニティFMのパーソナリティやテレビのナレーター、リポーターなどを経験。結婚後、食に興味を持ち、野菜ソムリエの資格を取得。生産者と消費者をつなぎ、発信することをメインに、食のイベント企画運営・販売促進・商品開発などを行っている。

●ヒストリー
 

局アナを夢見て東京へ
氷河期で就職できず

――北九州がご出身だそうですね。

「はい、戸畑が地元で、高校卒業後に東京に出ました」。

――目指すものがあったんですか?

「親元を離れたかったというのが本音なんですが、アナウンサーになりたいという夢もあって。それで、東京に出たら何かあるような気がしたんですよね。短大卒業後は、アナウンスの専門学校にも通いましたが、結局は局アナにはなれませんでした」

――それで福岡に戻られた。

「就職氷河期でもありましたので、就職できなくて。それで、福岡の百貨店の契約社員になって、インフォメーションなどの仕事をしました。でも、アナウンサーの仕事をあきらめられなくて、イベント会社に登録して、土日に『話す』仕事があったら、引き受けていました。スーパーの試食のデモンストレーションとか、イベントの司会とか、とにかくマイクを持って話す。お客さんを惹き付けるという仕事を、24歳くらいまでやりましたね」 

――そういった地道な活動が、その後、花を咲かせるわけですね。

「下関にコミュニティFMが開局することになって、応募したら合格。立ち上げのところから携わって、冠番組も担当させていただけるようになりました」

――よかったですよね。

「ただ、今までは、聞いている人が目の前にいての仕事がほとんどだったから、ラジオの仕事がわからない。ラジオは誰が、どこで、どのような状況で聴いてくれているのかわからないですから、どんな風に話したらいいのか、また話と話の『間』とかがわからなくて。最初のうちは、放送事故とかも起こしましたね(笑)。
このラジオの仕事を2年ほど経験したり、民放テレビや通販番組のナレーションの仕事をしたり、市の広報番組のレポーターを担当するなど、『話す』ことをたくさん勉強させていただきました。私は経験が浅かったのですが、『育ててあげよう』『現場で覚えなさい』という環境をいただけたので、本当に助かりました」

 

野菜ソムリエとの出会いで、
「伝える」仕事を加速

――その後も、「伝える」仕事を続けてこられたんですね。

「30歳で結婚しまして、少しゆっくりさせていただきましたが、久留米のコミュニティFMの仕事や、春日市のケーブルステーションの報道リポーターの仕事をいただくことになりました。取材して、原稿を書いて、編集する。生放送だったので大変でしたが、マイペースで、楽しみながら、お仕事させていただきましたね。でも、主婦も普通に頑張っていましたよ」。

たけのこ生産者取材


――その時に、「野菜ソムリエ」に出合うわけですね。

「やはり、毎日食事のことを考えますから、『食』が気になるようになりますよね。でも、あくまでも自分が楽しみたいと思って、野菜について勉強するようになりました。そんな中、農林水産省主催の野菜普及PRイベントで司会を担当した際、野菜ソムリエの王理恵さんにお会いして、『なんてきれいな方なんだろう』と。そこから、野菜のことを勉強するようになり、本だけでなく、農産物の直売所に行ったり、県内外の気になる野菜を作っている農家さんを訪問したりするようになりました。どこの農家さんも『食べたらわかる』っていうんですけど、やはり、その野菜のおいしさや農家さんのこだわりは、伝えないとわからないですよね。それで、知ってもらう活動をしよう、発信していこうと思うようになりました」

――バイタリティがありますよね。

「でも、私はその時34歳になっていて、若い頃のように元気いっぱいに話すのは、なんか違うなあと思ったんです。私しかできないことは、どんなことだろうと。そして、それは『生産者さんの思いをしっかり聞き、伝える』ということ。さらに、そのためのさまざまなきっかけを作っていくことじゃないかなあと思ったんですね。そこから、野菜のことが学べる講座を企画したり、料理法がわかるレシピを作って、消費者に届けたり。これが、とても喜ばれて。しかも、生産者さんたちも、意外に教えてあげたいと思ってるんです。その橋渡しができるようになり、私もうれしかったですね」

――奥が深そうですね。

「本当に知らないことばかりで。生産者さんを訪ねると、現場では発見と驚きの連続でした。野菜の花とかも知らないし、野菜がどのように実っているのかも、良く知らないですもんね。アスパラガス、わかるでしょ。あれ、そのまま放置しておくと、どうなると思います?」

――???

「柳川の農家さんにお邪魔した時、アスパラガスの話になったんですよね。アスパラガスの畑は春と夏とで畑の姿が違ったり、収穫時期が過ぎた後は、次の収穫に備えるんですが、秋から冬に見に行くと、ジャングルみたいになってるんですよ」

――アスパラガスが、ジャングルですか?

「もちろん土の管理などもしながらなんですが、そうすることで14~15年は収穫ができるのだそうです。そんなことも含め、野菜の物語をもっと知りたい、話したいと思ったんですね。でも、どういう風に話すか。一人でできることには限界があるので、会社を作り、周りの食の専門家と一緒に企画案を出し合ったりして、進めるようにしたんです。
カフェと一緒にコラボイベントをしたり、JAさんや行政とタッグを組んでみたりしながら、消費者にPR。すると、小売りをしているお店も実は知らないまま野菜を販売していることがわかったんです。それで、今度は販売店さんにもPRし、売り場づくりの提案なども行うようにしました。直売所では、野菜のPOPやディスプレイの講座を行ったり、時には抜き打ちチェックに行ったり。そうして、消費者の皆さんに野菜の魅力を伝え、その生産者さんたちのこだわりや思い、そして美味しさが伝わるよう、取り組んでいます」

 

夏のアスパラ畑
秋のアスパラ畑

人材育成を目標に、
食の情報を様々な角度から発信


――会社を興して、5月で5年目ですね。

「今の課題は、人材育成です。野菜のことだけでなく、販促についてや、店舗での見せ方など、さまざまなことをトータルにバランスよく学べる講座を、秋には立ち上げたいと思っています。人が育てば、さまざまなところに派遣したりもできますからね」。

――ナミさんは、どんなお子さんだったんですか?

「活発でしたね。近くの商店街をいつもウロウロしていて、迷子になったりして。人見知りもしないし、物おじしないから、いろんな人とすぐに仲良くなれる。そんな子どもでした」

――ご自身のことは、どう見えてますか?

「あー、楽観主義でしょうね。直観ですぐに動くし、動きながら考えて、修正しながらまた動いて、みたいな。でも、頑固なところがあるので、人の意見をしっかり聞くように、日頃から気をつけてます」

――ご自身の人生を振り返って、いかがですか?

「結果的には、局アナにならなくてよかったかな、と思います。型にはまった仕事ではなく、臨機応変に動き、立ち回って、応用のきく今の立場が、気に入っています。やはり、厳しく鍛えられたこと。育てていただいたこと、これが大きかったですね。
初めて起業して、持続することの難しさと、想いだけではダメだなということを痛感しました。5年間、会社を通して社会を学んだような気がします。これからも、自分なりに『我がまま』に、多くの人をサポートする仕事を継続していきたいと思っています」

加工品の商談会でサポートのお仕事
 
保育園で食育講座
 

 

氏名 桑原 ナミ(くわはら なみ)
会社名・団体名 N.GROWTH株式会社 代表
所在地

〒815-0032 福岡市南区塩原1-29-20-103
                  TEL・FAX092-553-7351

関連ホームページ http://ngrowth.co.jp/
 
 
 
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 インタビューを終えて
「桑原 ナミ」考

 

やまぐち総合研究所有限会社 中村 伸一

「竹を割ったような性格」と自己分析する桑原さん。自分の夢の実現のため、あきらめず、腐らず、地道に活動を続けてきた姿勢には、頭が下がる。その想いが強かったからこそ、今があるのではないかと思う。しかし、「想いだけではだめ」という冷静さも持ち合わせている。それは、想いだけで上京し、何とかなるのではないかと思っていた若い頃の反省があるのか。夢を実現させるには、行動力が伴っていなければならないことを、体感しているのかもしれない。
ご自宅では、ご主人と二人暮らし。ご主人はどう思っているのか聞くと、「ちゃんと仕事できているのか、心配しているみたいです」と桑原さん。仕事のアドバイスをくれたり、新しいレシピの味見をして意見をくれたりもするという。頑固な自分自身が素直に人の意見を聞けるようになっているのは、ご主人の存在が大きいのかもしれない。
初心者の頃、現場で厳しく育てられたことに対しての感謝の言葉が、取材中に何度も聞かれた。それだけ、「現場」で感じ、学べることを大切にしている。現場というと、生産者たちの生産現場も同じ。生産現場での言葉、土の匂い、野菜たちの自然な姿…そんな「生」の様子が、何よりも貴重な体験であり、消費者に伝えたいことのひとつなのではないだろうか。
これからの人材育成で、桑原さんと想いを共有する人材が各地で活躍する日も近い。イベントや講座など、さまざまな取組みで展開される桑原流の情報発信が、楽しみだ。

 
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