吉永 剛 (よしなが つよし)
土地家屋調査士吉永剛事務所
――吉永さんはどちらのご出身はなんですか?
「大牟田です。20歳まで、ずっと大牟田で生活していました」
――どんなお子さんだったんでしょう。
「僕には父親がいなくて、母一人、子一人でした。母は、朝から晩まで仕事をしていましたから、一人のことが多かったですね。超人見知りなんですが、一人が寂しいこともあったんでしょう、いたずらをして、親が学校に呼び出されるようなこともありましたね」
――小中学校の頃、熱中したことはありましたか?
「小学生の頃はバスケット部に入って、頑張ってました。結構熱中したみたいで、朝練から夕方の練習まで、黙々とやっていましたね。その代り、勉強は全然。高校は地元の公立高校に進学。その後、音楽にはまって、バンドでドラムを担当していました。夜遅くまで練習して、時には夜中までも。楽しかったですね」
――その後は、進学か就職か、という話になります。
「目標とか夢とかもなく、なんとなく生活してきたので、何も考えてなかったんです。でも、母子家庭ですしね、まあ就職ということになるかなと。何かしなきゃということで、卒業してすぐ、ホテルマンのアルバイトをしました。でも、この仕事が自分に合っていて。人に対する気遣いとかも勉強できて、仕事自体は大変で厳しかったですけど、楽しく頑張れたと思います」
――自分を変えるきっかけとなったアルバイトだったんですね。
「アルバイトをしながら、何となく考えていたのは、このままではダメなんじゃないかなということ。目的もなく、ただ漠然と生活していた中、何かしなきゃいけないんじゃないかと。『何か』と考えた時に、頭にあったのが、『人の役に立つ仕事』で『しっかり稼げる仕事』。では、『人の役に立つ』『稼げる』仕事って何だろうと考えたら、士業かなーと。もともと理数系は強かったから、不動産関係だと、資格取得を目指しやすいかなと思い、仕事しながら勉強するようになったんです」
――仕事しながらの勉強は、大変だったでしょう。
「毎日4時間と決めて、コツコツと。時々、やる気をなくしたり、モチベーションが下がったりすることもあったので、本格的に、真剣に勉強するようになったのは33歳くらいかな」
――勉強しよう、何かしなきゃと思うようになったきっかけって、何だったんでしょうね。
「実は、僕は25歳で結婚して、27歳で離婚しています。この離婚で、『また一人になったな』と思った時に、何か目標を立てようと。この離婚は、間違いなく、ひとつのきっかけになったと思います。また27歳の頃から、人脈をつくろうと異業種交流会に出かけたり、その他の集まりにも参加したりして、人付き合いを多くするようにしました。10代の頃には考えられなかったことですね。
その後、35歳で資格を取得。7年修行させていただいた事務所をまずは離れ、違う環境にて経験を積んでみようと。司法書士業務と連携しながら仕事ができる環境で、いいご縁をいただきながら、貴重な経験をさせていただきました」
――土地家屋調査士として、心がけていることは、どんなことですか?
「事務所の理念は『土地家屋調査士はあなたの財産を守ります』というもの。最近は、土地や建物に関する相続やトラブルなども多いので、丁寧にお話しを聞き、少しずつ解決方法の提案をさせていただくようにしています。
お話しを全然してくれない、難しいお相手もいますけど、少しでも会う機会を作り、何度も足を運ぶ。少しずつ近づく。その繰り返しで、解決に向かう努力を続けます。比較的スムースなケースと比較すると、時間も労力も10倍ほど違いますね」
――10倍ですか、エネルギーを使う仕事なんですね。
「でも、こういった交渉事は、自分に合っていると思います。幼少の頃を考えると信じられませんが、得意なのかもしれません」
――なぜ、そう思われます?
「相手の気持ちを、先読みすることができるからかなと思います。先に読むことで、かける言葉とかを変えていくことで、安心していただけたりしますからね」
――独立して1年です。
「はい、まだまだですが、少しずつ前進できていて、おかげさまで忙しくもなってきています。司法書士だけでなく、弁護士や税理士など、他の専門家と連携しているので、さまざまなご相談にもスピーディかつ円滑に対応できることが強みです」
――今後、やりたいことがあるそうですね。
「僕は今44歳で、今後さらに社会に貢献できる仕事をしたいと思った時に、以前から気になっていたのが『空き家問題』です。人口が増えていけば、そんなに心配しなくてもいいのかもしれませんが、当然人口は減少していて、なのに新築は増えていて、2030年には、3戸に1戸が空き家になると考えられているんです。これって、高齢化社会と同じような問題ですよね。特に、その空き家だけの問題ではなく、隣接する住宅との関連もあって、境界業務というのが増えていく可能性があるなと。この空き家の相談窓口が、土地家屋調査士になる可能性もあると思っていて、積極的に取り組んで行きたいと考えています」
――実は寂しがり屋さんだとか。
「(笑)子どもの頃、炭鉱の町で田舎ではありますが、飲食店の多いところに住んでいたからか、人恋しいというか、寂しいところは嫌だなと。意外に自分のことは全然わかっていなくて、何かをしている時、知人から『楽しんでいるよね』と言われたりすることがあるんです。自分では、そんな風に思ってはいないんですが、気づかないところで、充実しているかもしれないし、一生懸命やれているのかもしれません。
大好きだった音楽も、久しぶりに復活させようかと思っていますし、来年を目標に、海の見えるところに事務所を構えたいなとも。目標を達成するために、思い切った行動をすることも大切かもしれませんね。ずっと一人で生きてきて、目標を決めても中途半端だった自分が、こんな風に活動できているのは、人とのつながりができたから。これからも、この繋がりを大切にしていきたいですね」
――お母さんはお元気ですか?
「はい、66歳になりました。男だからですかね、高校生くらいからあまり話さなくなっていますね(笑)。それに、母は仕事尽くめでしたら。正月くらいは帰って、顔見せるようにしていますよ」
氏名 | 吉永 剛(よしなが つよし) |
会社名・団体名 | 土地家屋調査士吉永剛事務所 |
所在地 |
福岡市早良区高取1-27-26-204 |
関連ホームページ |
インタビューを終えて
「吉永 剛」考
㈱プロフェッショナルパートナーズ 神門 拓
迷いながら、自分を探しながら、生きてこられたんだなと思う。寂しがり屋だとおっしゃるけど、長く一人で生きてきた分、強い方なんだろうなとも。その中に隠れている器の大きさが、相談される方の悩みやトラブルをまとめて受け止めてくれる。そんな安心感もあるんだろうなと思う。
そんな吉永さんのライバルは、意外にもロボットだとか。ロボットのAIは進んでいて、弁護士さんたちも危機感を感じるほどだとか。そんな時代だからこそ、ひとりひとりに丁寧に、気持ちを汲んだ対応をする。温度が感じられる言葉かけが、何よりも必要な時代ではないだろうか。
さらに吉永さんがやってみたい仕事が「民泊」。会社も減っていく中、観光の分野で、新しい取り組みが必要だという。空き家の問題なども含め、「民泊」が起爆剤になれば、と考えているそうだ。吉永さんが目指すものは、社会貢献。社会全体の問題もあれば、一人ひとりが抱える問題もある。一人ひとりの問題は、社会全体からみると小さな問題のように思えるが、本人からすると、何よりも大きく、早く解決したい問題。そんな一つ一つに向き合う吉永さんは、いつもと違う表情をされているに違いない。プライベートなお話ができる機会も、ぜひいただきたいものだ。